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はじめに:ここで書けること、書けないこと
冬になると、あったかインナーを着た日だけ肌がむずむずする、という声があります。ヒートテック®などの名前で売られている機能性インナーは広く使われているので、同じことを感じている人も、まったく平気な人もいます。感じ方には大きな個人差があります。
このページは、繊維の一般的な性質にもとづく整理です。医療的な助言ではありませんし、原因を特定するものでもありません。症状が続く場合や、皮膚に見た目の変化がある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。ここで扱うのは、タグを見て確かめられる範囲の話だけです。
機能性インナーの中身を、タグの組成表示から読む
まず、着ているものが何でできているかを確かめます。家庭用品品質表示法にもとづく組成表示は、消費者庁が定めた指定用語で書かれていて、繊維の名前は勝手な言い換えができません。あったかインナーとして売られている製品の多くは、次のような繊維を組み合わせた混紡です。
- ポリエステル:乾きが速い合成繊維。日本化学繊維協会の解説では、疎水性で吸湿性がほとんどないことが特徴として挙げられています
- アクリル:ウールに似たふくらみを持つ合成繊維。東京都クリーニング生活衛生同業組合は、保温性にすぐれた繊維として紹介しています
- レーヨン:木材パルプを原料にした再生繊維。吸湿性が高い側の繊維です
- ポリウレタン:数%だけ混ぜて伸縮性を与える繊維。単独ではまず使われません
割合は製品ごとに違います。「あったかインナー」という同じ売り場の言葉でも、ポリエステルが主体のものと、綿を多く含むものでは中身がかなり違う、という点がまず出発点になります。
物性の側から見ると、何が起きているか
繊維そのものに刺激する力があるかどうかではなく、汗の残りやすさ・摩擦・生地の硬さという物性の組み合わせとして見ると、整理がしやすくなります。『人間生活文化研究』2017年27号に収録された研究では、次のことが報告されています。
- ポリエステルは、汗が生地の表面に残りやすいこと
- 繊維と皮膚がこすれることで、かゆみが起きやすいこと
- 綿であっても、硬い布は皮膚を刺激して不快感を与えること
3つ目が重要です。「化学繊維だから肌に良くない」という単純な話ではありません。綿でも生地が硬ければ同じことが起こり得る、と同じ研究が述べています。実際、公定水分率(JIS L 0105:2020 で定められた、温度20℃・相対湿度65%の標準状態での値)を見ると、ポリエステルは0.4%、綿は8.5%と大きく違いますが、この数字が示すのは水分を含みやすいかどうかであって、肌当たりそのものではありません。
もうひとつ、冬は重ね着が増えるぶん、布と肌、布と布がこすれる回数が増えます。同じインナーでも、上に何を着ているかで摩擦の量は変わります。
同じ「あったかインナー」でも中身は違う
売り場の呼び名は同じでも、組成はかなり違います。本サイトのチェッカーには、代表的な組み合わせを一般名と組成のまま4種類置いてあります。
- あったかインナー(標準):ポリエステル × アクリル × レーヨン × ポリウレタン
- 綿混あったかインナー:綿 × アクリル × ポリウレタン
- 接触冷感インナー:ナイロン × ポリウレタン
- 吸汗速乾スポーツインナー:ポリエステル 100%
同じ「暖かいインナー」の棚にあっても、綿混タイプは吸湿性の高い繊維を含み、標準タイプは疎水性の合成繊維が主体になります。手元のタグに書かれている繊維名を見れば、自分が着ているのがどちらに近いかはすぐ分かります。 本サイトには繊維ごとの解説ページを14枚置いていて、公定水分率と帯電の傾向を出典つきで確かめられるようにしてあります。タグに知らない繊維名があったら、そこから引いてみてください。
なお、混紡の判定は「組成に含まれる素材のうち、相手からいちばん離れる側の値」を代表として行っています。実際の配合比率は製品ごとに違うため、控えめではなく厳しい側の結果が出る、という前提で見てください。
見直せる選択肢
いずれも「こうすれば起きなくなる」という話ではなく、条件を変えてみる選択肢です。
- 組成を変えてみる:綿の割合が高いタイプや、綿100%のインナーという選択肢があります。同じ売り場に並んでいても組成はまったく違います
- サイズと着方を見直す:体に強く張りつくサイズは、動くたびに摩擦が生じます。1サイズ上げる、上に着るものを替える、という調整ができます
- 着るシーンを分ける:大量に汗をかく場面と、じっとしている場面では、汗が残ることの意味が変わります。屋内で過ごす日と、外を歩く日で使い分けるという考え方があります
- 重ねる相手を変える:静電気の起きやすさは、インナー単体ではなく上に着るものとの組み合わせで決まります。これは本サイトのチェッカーで確かめられます
手持ちの組み合わせを確かめる
いま着ている「インナー+トップス+アウター」を選ぶと、静電気の起きやすさ・季節の向き・肌当たりで挙げられている注意点を、一度に表示します。判定に使っている値には、すべて出典と確認日を付けています。
機能性インナーは、一般名と組成(たとえば「あったかインナー(標準)=ポリエステル×アクリル×レーヨン×ポリウレタン」)でそのまま選べるようにしてあります。手元のタグと見比べながら選んでみてください。