ウールを知る
タグの「毛」は、羊の毛とは限らない
消費者庁の指定用語表では、動物繊維の「毛」の下に羊毛(ウール)・モヘヤ・アルパカ・らくだ・カシミヤ・アンゴラが並んでいます。つまり組成表示に「毛」とだけ書かれている場合、羊を含む何らかの動物の毛を指していて、羊の毛とは限りません。東京都クリーニング生活衛生同業組合も同じ注意を書いています。「ウール」と書いてあれば羊毛です。
縮れとうろこ、この二つで説明がつく
同組合の解説によれば、羊毛繊維の特徴は波状の縮れと、表面が鱗状になっていることの二つです。縮れが弾力性と保温性を生むので、セーターやマフラーのような防寒着に多く使われます。IWTO(国際羊毛繊維機構)の資料も、ウールの中心にあるのはケラチンというたんぱく質で、外側のキューティクルは屋根の板を重ねたような鱗が並んだ構造だと説明しています。この縮れ(クリンプ)が空気を抱えこむことが、暖かさにつながります。
公定水分率が繊維のなかでもっとも高いのもウールです。乾いた空気の中でも繊維が水分を持っているため、帯電列では静電気を帯びやすい側に位置づけられます。
洗濯機で縮むのは「フェルト化」
鱗状の表面は水を多く含むと開きます。開いた状態で揉んだりこすったりすると繊維どうしが絡み合い、縮んで手触りが硬くなります。これがフェルト化です。同組合は、洗濯機で洗うと回転によって鱗が絡まりやすいこと、そして一度硬くなったものは元に戻らないことを明記しています。汗をかいた脇の下だけが縮むこともあるとされています。
裏を返せば、濡れているときに強く揉まなければフェルト化は起きにくいということでもあります。手洗いが指定されている理由はここにあります。
チクチクは「ウールだから」ではなく「太いから」
ウールの繊維径はマイクロン(μm)で測られ、IWTOの資料では 14.5μm 以下から 32μm を超えるものまで、幅のある区分が示されています。細いものは肌に直接触れる肌着やショール、太いものは厚手のセーターやラグ、さらに太いものはカーペットというように、同じウールでも太さによって向く用途がまったく違います。
『人間生活文化研究』(2017年)に収録された研究では、綿であっても硬い布は皮膚を刺激して不快感を与えると述べられています。刺激を感じるかどうかは繊維の種類だけでは決まらず、太さや生地の仕上げが関わります。細い繊維を使った製品なら感じ方が変わることもありますが、感じ方には個人差があります。具体的な数値の区分は、このページの「等級のものさし」にまとめています。
帯電列では、資料によって位置づけが分かれる
ウールは、本サイトが「資料により見解が分かれます」と表示する代表的な素材です。ニッセンケン品質評価センターの帯電列ではウールがナイロンよりプラス側に置かれ、東京都クリーニング生活衛生同業組合と帝人フロンティアの資料では逆にナイロンがウールよりプラス側に置かれています。
本サイトは、こうした場合に順位を数値にせず、より静電気が起きやすい側に寄せて判定したうえで、その旨を表示します。細かく見えるほど正しく見えてしまう表示を避けるための判断です。
羊にも種類がある
同組合の解説では、羊の種類は3,000種以上あるとされ、大きく三つに分けられています。衣服用に改良され、繊維の長さ・太さが均一で生産量がもっとも多いメリノ。編物や厚地織物、カーペットに多く使われるクロスブレッド。そして繊維が荒く衣服に適さない野生種です。やわらかさで知られるラムウール(生後5〜6か月以内の毛)はメリノ種に属すると説明されています。
向いている服・気をつけたい場面
冬のニット、コート、オールシーズンのスーツ地が得意分野です。一方、乾燥した季節にポリエステルやアクリルのインナーと重ねると、帯電列の上では離れた組み合わせになります。手持ちの重ね着がどうなるかは、チェッカーで確かめられます。