ポリウレタンを知る
ポリウレタン100%の服は存在しない
組成表示で「ポリウレタン 3%」「ポリウレタン 5%」という小さな数字を見たことがあると思います。この数字が小さいのには理由があります。日本化学繊維協会の解説によれば、ポリウレタンはゴムのように伸び縮みする繊維で、100%使いの製品はなく、他の繊維と混ぜて利用されています。
使われ方はいくつかあります。ポリエステルなどと一緒に編み込んだ2ウェイ(縦横2方向に伸縮可能)トリコットは水着やスポーツウェアに。ポリウレタンを芯にナイロンなどで巻きつけた糸はカバード糸と呼ばれ、ストッキングやボディファンデーションに。紡績工程で芯に挿入したコアスパン糸や、他の繊維と合わせて撚った糸は婦人服やジーンズに使われます。スキニーパンツも、伸びるスーツの裏地も、たいていこの繊維が入っています。
本サイトのチェッカーでポリウレタンを単独で選べないのは、この現実に合わせているためです。組成に含まれているときは、いっしょに使われている素材のうち相手からいちばん離れる側の値で判定されます。
着ていなくても劣化が進む、という話
ポリウレタンでいちばん知っておく価値があるのが、加水分解です。
国民生活センターは、数年前に買った靴の底が割れたという相談への回答として、加水分解を「空気中の水分や雨水などの浸入で、分子結合が次第にもろくなること」と説明しています。そのうえで、この現象は使用頻度と無関係に起こり、製造時点から始まっている宿命的な変化だと明記しています。日本は総じて高温多湿の環境にあり、加水分解が進みやすいことも要因に挙げられています。
そして同センターは、ウレタンは靴以外に衣料品などにも使われており、剥がれ、ひび割れ、ベタつきなどが起こることを知っておきましょうと書いています。クローゼットにしまいっぱなしにしていた服が、久しぶりに出したらベタついていた——という経験があるなら、これが理由かもしれません。
「買った時から進んでいる」というのは大げさな言い方ではなく、公的機関がそう説明している性質です。ここでは具体的な年数は書きません。進み方は保管環境で変わり、一律の寿命として示せる数字を一次資料で確認できなかったためです。
少しでも進みを遅くするには
同センターが挙げているのは、使用後に水分や汚れをしっかり取り、風通しよく保管するといった工夫です。本格的に使う前には各部がしっかり機能しているか確かめること、不安を感じたら買い替えを検討することも勧められています。メーカーによっては加水分解の問題を認識して有償で修理を行っていることもある、とも書かれています。
東京都クリーニング生活衛生同業組合がまとめた繊維の一覧でも、ポリウレタン(スパンデックス)について「よく伸び、その回復力も優れている。ゴムより強度が高い」という長所とともに、「染色性が低く濃色は色落ちしやすい。また、熱や紫外線、汗などの作用で黄変や劣化が起きやすい」という短所が挙げられています。汗が挙がっているのは実用上の要点です。汗をかいたまま長く放置しない、というのは、この繊維にとって意味のある扱いになります。
静電気の面では、マイナス側
ポリウレタンは帯電列の一次資料に個別の記載が見当たらない素材です。本サイトでは、公定水分率が低い合成繊維であることから、マイナス側に寄せた傾向値として扱っています。試験値ではなく、より静電気が起きやすい側に寄せた整理であることを、物性データ表にも明記しています。
もっとも、混紡の割合はたいてい数%です。あったかインナーのようにポリエステルやアクリルと一緒に入っている場合、判定を引っ張るのはポリウレタン以外の素材であることがほとんどです。
タグでの書かれ方
消費者庁の指定用語表では、ポリウレタン系合成繊維の指定用語は「ポリウレタン」です。海外の表示で見かける「スパンデックス」「エラスタン」は同じ系統の繊維を指す呼び名ですが、日本の組成表示では「ポリウレタン」と書かれます。
組成表示の読み方として
ポリウレタンの数字は、その服の「伸びやすさ」と「経年で変わりやすさ」を同時に示しています。数字が入っていること自体は悪いことではなく、伸縮性が要る服には必要なものです。長く着たい服なら、保管の仕方に少し気を配る。それがこの繊維との付き合い方です。