綿を知る
綿は、種子のまわりに生える繊維
東京都クリーニング生活衛生同業組合の解説によれば、綿とはアオイ科ワタ属の多年草「ワタ」の種子からとれる繊維です。繊維の断面を顕微鏡で見ると、天然の撚りがかかった、チューブをつぶしたような構造をしています。この空洞に含まれる空気が保湿と断熱のはたらきをします。
同組合が挙げる綿の長所は、強度があり耐摩耗性があること、吸収性・放湿性に富んでやわらかいこと、染色性がよいこと、アルカリに強く耐洗濯性がよいことです。短所は、縮みやすいこと、シワになりやすいこと、繰り返し洗濯することで硬くなることです。ただし一般に流通しているほとんどの商品には短所を補う加工が施されているため、すべての商品にこれが当てはまるわけではないとも書かれています。
「綿だから肌にやさしい」で終わらせない
『人間生活文化研究』(2017年)に収録された研究では、綿であっても硬い布は皮膚を刺激して不快感を与えると述べられています。素材の名前だけで肌当たりが決まるわけではなく、織り方や仕上げ、生地の硬さが関わります。同組合も、綿製品は洗濯頻度が高くなるため摩擦で繊維が擦り切れる場合があると注意しています。感じ方には個人差があります。
綿は帯電列では中央付近に置かれる素材で、静電気の面では扱いやすい部類です。ただし乾きが遅いという性質があるため、汗を大量にかく場面や乾きにくい環境での重ね着では、別の面で不利になることがあります。得意なことと苦手なことが、はっきり分かれている繊維です。
繊維の長さで、作れる糸が変わる
同組合の解説では、綿は天然繊維のため品種によって繊維の長さが異なり、長い繊維ほど細い糸を得ることができ、細い糸はしなやかで光沢のある製品になると説明されています。一般に流通している綿の繊維の長さは平均28mm程度、高級綿と呼ばれるものは35mm以上とされています。繊維が長い綿は栽培条件が厳しく生産地域が限られるため、希少価値が高くなります。
高級綿のなかでも海島綿(シーアイランドコットン)やエジプト綿は、天然の捻じれが多いため強い撚りをかけた細い糸を作ることができる、と紹介されています。
制度上の「超長綿(ELS)」は、長さで定義されていない
ここが少しおもしろいところです。米国の連邦規則集 7 CFR 1427.3 を読むと、超長綿(ELS=Extra Long Staple)は「米国で生産され、ローラージンで繰られた、アメリカン・ピマまたはその他のバルバデンセ種(Gossypium barbadense)の綿」と定義されています。つまり制度上のELSは、繊維の長さの数値ではなく、品種と加工の仕方で決まっています。
一方で、業界の用語としては長さの目安が使われています。米国の綿花生産者団体である Cotton Incorporated の用語集では、ELSは繊維長 1 3/8インチ(約34.9mm)以上、その一段下の長綿(LS)は 1 1/8〜1 3/8インチとされています。同じ用語集でアップランド綿(Gossypium hirsutum)は、もっとも一般的な種で短繊維から中繊維の綿を指す、と説明されています。
数値の区分と制度上の定義が別々に存在している、というのが実際のところです。具体的な数値は、このページの「等級のものさし」にまとめています。
短い繊維は、劣った綿ではない
繊維長は「細い糸を作りやすいかどうか」を示す指標であって、綿としての優劣を示すものではありません。丈夫さや厚みが求められる用途では、細くしなやかであることが必ずしも得ではないからです。デニムやタオル地のような、厚みと丈夫さで価値が決まる製品まで同じものさしで並べても意味がありません。等級は「上か下か」ではなく「何を測った値なのか」で読む、というのが本サイトの考え方です。
タグでの書かれ方
消費者庁の指定用語表では、綿の指定用語は「綿」「コットン」「COTTON」の三つです。品種や繊維長は組成表示には出てこないので、タグを見ただけでは超長綿かどうかは分かりません。
向いている服・気をつけたい場面
肌着、Tシャツ、タオル地のように、吸水性とやわらかさが効く用途が得意分野です。逆に、汗を大量にかく運動時のベースレイヤーや、乾きにくい環境での重ね着では、乾きの遅さが出やすくなります。手持ちの組み合わせは、チェッカーで確かめられます。