リヨセルを知る
一般名がリヨセル、ブランド名がテンセル®
タグに「リヨセル」と書かれているとき、それはブランド名ではなく繊維そのものの名前です。東京都クリーニング生活衛生同業組合の解説によれば、リヨセルとテンセル®は同じ繊維です。同組合は、「リヨセル」はオーストリアのレンチング社、「テンセル」は英国のコートルズ社の商標として使われていたが、2004年に両社が合併し、ブランド名を「テンセル」、総称として「リヨセル」と呼ぶようになった、と説明しています。
本サイトが選択肢や表示に一般名の「リヨセル」を使っているのは、この関係があるからです。商標は特定の会社のブランドを指す言葉で、繊維の種類を指す言葉ではありません。
ユーカリを溶剤で溶かして、溶剤を回収して使い回す
日本化学繊維協会の解説によれば、リヨセルはユーカリの木材パルプを原料とし、NMMO(N-メチルモルフォリン-N-オキサイド)と呼ばれる溶剤を用いて紡糸した溶剤紡糸セルロース繊維です。従来のレーヨン系繊維の製造方法と異なり、溶剤をほぼ完全に回収・再利用できることを特長としています。
同組合も、リヨセルはナイロンやポリエステルのように石油を原料としておらず、溶剤を回収して再利用するため廃液が環境中に放出されない、と書いています。本サイトはこの点について「エコである」といった評価の言葉は使わず、溶剤を回収・再利用する製法である、という事実のところまでで止めておきます。
物性は、レーヨンの弱点を抑えた方向
同協会によれば、リヨセルの繊維断面は円形で、レーヨンと比較して強度が高く、湿潤時の収縮や強度低下が小さく、弾力性も備えます。ソフトな風合いで発色性や吸放湿性に優れることから、ファッション分野を中心に高い評価を受けているとされています。
同組合が挙げるメリットは、ソフトな風合いと適度な光沢感、繊維がやわらかくドレープ性があること、吸湿性に富むこと、ハリ・コシ感・弾力性(反発性)があることです。デメリットは、摩擦により毛羽立ちや白化しやすいこと(特に湿った状態での摩擦に注意)、濡れると風合いが固くなる場合があることです。お手入れとしては、摩擦に弱いことから洗濯時間を短くするなどの注意が挙げられています。
濡れても強度が落ちにくいのに、濡れたときの摩擦に弱い——ややこしいですが、別の性質の話です。強さと、表面の毛羽立ちやすさは別物だと考えてください。
タグでの書かれ方は、資料によって説明が分かれる
ここは本サイトが慎重に扱っている箇所です。
同組合の解説は「リヨセル・テンセルは家庭用品品質表示法では『指定外繊維』の扱いになる」と説明し、そのうえで2017年の改正により「指定外繊維」の文言は使えなくなり、代わりに「分類外繊維」という文言が使えるようになったため、このページの『指定外繊維』は現在では『分類外繊維』に該当する、と注記しています。
一方、消費者庁の現行の指定用語表を見ると、リヨセルという名前は指定用語として載っていませんが、再生繊維の欄に「上記以外の再生繊維」という区分があり、「再生繊維」という用語にその繊維の名称や商標を括弧を付けて付記する形が定められています。同表には、2023年(令和5年)1月20日付でキュプラおよびリヨセルの繊維鑑別・混用率試験方法に関するJISが制定されたこと、組成繊維が再生繊維の分類に該当する場合はその規格等に基づいて繊維の種類を判断すること、という注記も付いています。「分類外繊維」は、同表では各分類のいずれにも当てはまらない繊維の欄に置かれています。
現行の表に沿って読むなら、リヨセルは再生繊維の分類に入り、「再生繊維(リヨセル)」のような形で表示されることになります。ただし手元の服のタグには、より古い表記が残っていることもあります。本サイトはどちらの資料も否定せず、現行表を基準に読みつつ、組合の解説が別の説明をしていることも併記しておきます。
静電気の面では、中央付近
リヨセルは帯電列の一次資料に個別の記載が見当たらない素材です。本サイトでは、同じ再生セルロース系で公定水分率も同じ値のレーヨンに準じた傾向値として扱っています。試験値ではなく、同じ区分の素材に準じた整理であることを、物性データ表にも明記しています。
向いている服・気をつけたい場面
ブラウス、シーツ、デニムの混紡のように、落ち感と吸湿性が効く用途で使われています。強い摩擦がかかる用途では、毛羽立ちや白化が出やすくなります。重ね着の組み合わせは、チェッカーで確かめられます。